「手術は無事に終わったけれど、どこまで歩かせていいのかわからない」「安静にしすぎると、逆に筋力が落ちてしまわないだろうか」と、不安を抱えている飼い主様もいらっしゃるかと思います。
特に、椎間板ヘルニアや前十字靭帯疾患、骨折などの整形外科手術後は、退院後の過ごし方が回復に影響する場合があります。
一方で、「元気そうだから、もう普通に散歩しても大丈夫」と判断してしまうと、再発や悪化につながるケースもあります。そのため、術後は“安静”と“適切に体を動かすこと”のバランスが大切です。
なお、犬のリハビリテーションは、特別なトレーニングだけを指すものではありません。術後の生活を少しでも快適にし、その子らしい毎日を支えるための大切なケアのひとつです。
そこで今回は、犬の術後リハビリの目的や、自宅でできるケアの基本、再発予防のために意識したいポイントなどについて解説します。

■目次
1.犬のリハビリテーションとは?術後に行う目的をわかりやすく解説
犬のリハビリテーションとは?術後に行う目的をわかりやすく解説
犬のリハビリテーションとは、筋力や関節の動きを維持しながら、日常生活を送りやすくするためのサポートです。
「元通りに戻す」だけを目標にするのではなく、その子が無理なく生活できる状態を目指し、QOL(生活の質)をできるだけ維持する考え方が重視されています。
たとえば、術後に安静期間が長く続くと、筋肉が落ちたり、関節が硬くなったりする場合があります。さらに、痛みをかばう歩き方が続くことで、別の足や腰へ負担がかかるケースもあります。
そのため、状態に合わせて少しずつ体を動かし、足腰への負担を軽減していく取り組みが大切です。
犬の関節リハビリは、以下のようなさまざまな疾患や状態で行われています。
・膝蓋骨脱臼(パテラ)
・前十字靭帯疾患
・骨折後の回復期
・椎間板ヘルニア
・神経疾患による歩行障害
・シニア犬の筋力低下
犬の椎間板ヘルニアについてより詳しく知りたい方はこちら
当院の椎間板ヘルニアの画像診断の症例についてより詳しく知りたい方はこちら
近年では、犬の後ろ足麻痺のリハビリや、シニア犬の転倒予防を目的としたリハビリテーションに力を入れる動物病院も増えています。
術後の犬はどれくらい安静が必要?
術後は、「とにかく動かさないほうが安心」と考えてしまう飼い主様も多いかもしれません。
もちろん、手術直後は傷口や体への負担を考慮し、安静が必要です。しかし、回復状況によっては、少しずつ体を動かすことで筋力低下や関節の硬化を防げる場合もあります。
ただし、運動量を自己判断で増やすのは危険です。
特に、犬の椎間板ヘルニアのリハビリでは、歩行状態や神経症状を確認しながら、段階的に進めていく必要があります。
見た目には元気そうに見えても、体の内部ではまだ回復途中であるケースも少なくありません。そのため、「普通に歩けているから問題ない」と判断せず、獣医師の指示に沿って過ごすことが大切です。
動物病院で行う犬のリハビリにはどんなものがある?
犬の術後リハビリでは、状態や疾患に応じて、さまざまな方法を組み合わせながら進めていきます。
内容は犬によって異なるため、「どのタイミングで、どこまで動かすか」を見極めることが重要です。
たとえば、関節を無理なく動かす運動を行ったり、筋力維持を目的としたトレーニングを取り入れたりする場合があります。
さらに、犬のトレッドミルリハビリでは、水中や専用機器を使用しながら歩行練習を行うケースがあります。水中では浮力によって足腰への負担を軽減しやすいため、術後の歩行訓練として活用されることがあります。
そのほか、犬のマッサージを取り入れながら、筋肉の緊張を和らげたり、体を動かしやすくしたりする場合もあります。
ただし、インターネットで見た方法を自己流で行うのは危険です。症状によっては、無理な運動や刺激によって状態が悪化する可能性もあります。
なお、当院では、CT・MRIなどの画像診断機器を活用しながら、神経外科領域を含めた診断や術後管理に対応しています。状態を確認しながら、その子に合わせたリハビリの方向性を検討するケースもあります。
犬と猫のCT・MRI検査についてより詳しく知りたい方はこちら
自宅でできる犬のリハビリとケアのポイント
術後の回復では、病院での管理だけでなく、ご自宅での過ごし方も重要です。ただし、自宅ケアは必ず獣医師の指示のもとで行いましょう。
「少し歩かせたほうが良さそう」「マッサージをしたら改善するかもしれない」と感じても、病気や術後の状態によって適切な対応は異なります。
また、市販サプリメントだけで改善を目指すのではなく、生活環境や運動量、体重管理などを総合的に見直していく視点も大切です。
日常生活では、以下のような工夫が役立つ場合があります。
<滑り止めマットを敷く>
足腰への負担軽減や転倒予防につながります。特にシニア犬や後ろ足に不安がある犬では重要です。
<短時間の歩行練習を行う>
無理のない範囲で、少しずつ歩く時間を調整します。急に長時間の散歩へ戻すのは避けましょう。
<適正体重を維持する>
体重増加は、関節や腰への負担につながります。術後は運動量が減りやすいため、食事量の調整が必要になる場合もあります。
<サークルやクレートを活用する>
急な動きを防ぎながら、落ち着いて過ごせる環境を整えやすくなります。
再発予防のために飼い主様が日常で意識したいこと
術後は、「手術が終わったから安心」というわけではありません。再発を防ぐためには、その後の生活管理も非常に重要です。
特に、犬の椎間板ヘルニアのリハビリでは、退院後の生活環境がその後の体調維持に関わる場合があります。
たとえば、滑りやすい床で生活していたり、体重が増えていたりすると、腰や関節へ負担がかかりやすくなります。
また、シニア犬では筋力低下によって転倒リスクが高まるため、年齢に合わせたサポートも欠かせません。
そのため、日頃から以下のような点を意識することが大切です。
・適度な運動を継続する
・急な方向転換やジャンプを避ける
・歩き方や筋力の変化を定期的に確認する
・不安な変化があれば早めに動物病院へ相談する
「少し気になるけれど、様子を見ても大丈夫だろうか」と迷う場面もあるかもしれません。
しかし、小さな変化が早期発見につながるケースもあります。無理に動かしたり、反対に必要以上に安静にし続けたりせず、その子の状態に合わせて調整していく姿勢が大切です。
まとめ
犬のリハビリテーションは、「歩けるようにするための訓練」だけを指すものではありません。
術後もその子らしい生活を続け、少しでも快適に過ごせるよう支えていくための大切なケアです。
特に、犬の術後リハビリでは、動物病院での管理だけでなく、ご自宅での過ごし方や環境づくりも回復に関わります。
「どこまで動かしていいのかわからない」「再発を防ぐために何をしたらいいのだろう」と悩んだ際は、飼い主様だけで抱え込まず、動物病院と相談しながら進めていくことが重要です。
なお、当院では神経外科領域を含めた診断や術後管理を行いながら、その子の状態に合わせたリハビリや生活サポートについてもご相談を承っています。千里・豊中エリアで犬の術後ケアやリハビリについて不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
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