犬の嘔吐には、食事内容や胃腸炎、膵炎、異物の誤飲など、さまざまな原因があります。検査を受けても明らかな異常が見つからず、吐き気止めを使用すると一時的に落ち着くものの、再び嘔吐を繰り返すケースもあります。
また、診察時に元気や食欲があっても、胃の中に異物が残っている可能性は否定できません。症状を繰り返している場合は、必要に応じてCT検査や内視鏡検査などを行い、原因を詳しく調べることが大切です。
今回は、約1か月にわたって嘔吐を繰り返していたヨークシャー・テリアの症例について、来院から検査、内視鏡による胃内異物の摘出までの経過をご紹介します。

■目次
1.症例情報
2.約1か月続く嘔吐で当院を受診
3.血液検査と造影CT検査で胃内異物を確認
4.内視鏡を使って胃内異物を摘出
5.処置後の治療方針と、嘔吐・誤飲で受診したいサイン
6.まとめ
症例情報
・犬種:ヨークシャー・テリア
・年齢:2歳9か月齢
・性別:去勢オス
・体重:約3.3kg
・主訴:約1か月続く慢性的な嘔吐
・既往歴・アレルギー:なし
・診断:胃内異物
・処置:内視鏡下胃内異物摘出術
約1か月続く嘔吐で当院を受診
この症例では、犬が約1か月前から嘔吐を繰り返していました。
かかりつけの動物病院やほかの動物病院で複数の検査を受けたものの、嘔吐の原因は特定できなかったそうです。別の動物病院で内視鏡検査を受ける予定でしたが、精密検査を希望して当院を受診されました。
吐き気止めを使用すると2〜3日ほどで嘔吐が治まるものの、しばらくすると再発する状態が続いていました。当院を受診した時点では一般状態や呼吸状態に大きな問題はなく、腹部の触診でも明らかな腫瘤や痛みは認められませんでした。
このように、診察時には元気に見えても、胃の中に異物が残っている場合があります。
血液検査と造影CT検査で胃内異物を確認
まず、全身状態や麻酔に関連するリスクを確認するため、身体検査と血液検査を実施しました。その後、胸部から腹部にかけて単純CT検査と造影CT検査を行い、嘔吐の原因となる異常がないか詳しく確認しました。
CT画像では、胃の出口付近に、種と思われる異物が認められました。一方で、十二指腸より先の消化管や腹腔、胸腔には、今回の嘔吐の原因と考えられる明らかな異常は確認されませんでした。
以上の検査結果から、胃内にとどまっていた異物が散発的な嘔吐を引き起こしている可能性が高いと判断しました。
内視鏡でも胃の出口付近を確認したところ、種と思われる異物が見つかりました。

内視鏡を使って胃内異物を摘出
全身麻酔下で口から内視鏡を挿入し、胃の内部を観察しました。CT検査で異物が疑われた胃の出口付近を確認すると、胃内に種が残っていました。
そこで、内視鏡の先端からバスケット鉗子を挿入し、異物をつかんで慎重に摘出しました。処置は開腹することなく内視鏡のみで完了し、所要時間は約15分でした。
内視鏡による異物摘出は、開腹手術と異なり腹部の切開を伴わないため、術後の痛みや回復期間など、犬の体にかかる負担を抑えられる可能性があります。
ただし、異物の大きさや形、異物の位置、誤飲からの経過時間によっては、内視鏡で取り出せないこともあります。異物がすでに腸へ移動している場合や、消化管の閉塞・穿孔が疑われる場合などには、開腹手術が必要になる可能性があります。

今回摘出した種と思われる異物のように、小さな異物でも胃内に残ることで嘔吐の原因になる場合があります。
当院で行っている内視鏡検査についてより詳しく知りたい方はこちら
処置後の治療方針と、嘔吐・誤飲で受診したいサイン
処置後は胃薬と胃粘膜保護剤を処方し、嘔吐が治まるか経過をみる方針としました。
今回のように、胃内異物があっても嘔吐が毎日続くとは限りません。異物が胃の中で移動したり、胃の出口を一時的に刺激したりすることで、症状が表れたり治まったりする可能性があります。
犬に次のような様子がみられる場合は、早めに動物病院へご相談ください。
・嘔吐を繰り返している
・吐き気止めで一時的に治まっても再発する
・食欲や元気が低下している
・水を飲んでも吐いてしまう
・おなかを痛がる、触られることを嫌がる
・おもちゃ、果物の種、布、ひもなどを飲み込んだ可能性がある
・吐こうとしているのに何も出ない
誤飲した可能性がある場合は、ご家庭で無理に吐かせようとせず、何を、いつ、どのくらい飲み込んだ可能性があるのかを動物病院へお伝えください。
同じ種類の物や残っている破片、商品のパッケージなどがあれば、診察時の参考になります。
まとめ
今回の症例では、約1か月にわたって嘔吐を繰り返していました。診察やこれまでの検査では原因が明らかになりませんでしたが、造影CT検査によって胃の出口付近に異物が見つかり、内視鏡で摘出することができました。
犬の嘔吐の原因は多岐にわたり、症状の出方だけで原因を判断することは困難です。また、吐き気止めでいったん症状が治まっても、原因となる病気や異物が残っている場合があります。
当院では、診察や血液検査に加え、必要に応じてCT検査や内視鏡検査を組み合わせ、繰り返す嘔吐の原因を詳しく調べています。愛犬の嘔吐が続いている場合や、異物の誤飲が疑われる場合は、お早めにご相談ください。
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