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【症例実績】5歳ミニチュア・ダックスフンドの椎間板ヘルニア|片側椎弓切除術で再び歩けるようになるまで

「最近、愛犬がソファやベッドに飛び乗らなくなった」
「後ろ足が少しふらついている気がする」
「抱っこすると嫌がるようになった」

 

このような変化に気付いても、「年齢のせいかな」「少し様子を見ようかな」と考える飼い主様は少なくありません。

 

しかし、ミニチュア・ダックスフンドでは、こうした変化の背景に椎間板ヘルニアが隠れている場合があります。

 

椎間板ヘルニアは進行すると、後ろ足が動かなくなったり、自力で立てなくなったりすることもある病気です。一方で、適切なタイミングで診断と治療を行うことで、良好な回復が期待できるケースもあります。

 

そこで今回は、当院の実際の症例として、突然後ろ足が立たなくなった5歳のミニチュア・ダックスフンドの、CT・MRIによる精密検査と片側椎弓切除術、そして継続的なリハビリによって再び走れるようになるまでの経過をご紹介します。

 

 

■目次

1.症例情報とご来院までの経過
2.ご相談内容と来院時の様子
3.検査結果と治療方針
4.処置の流れ
5.術後の入院リハビリと退院までの経過
6.術後約2か月で走れるまで回復した経過
7.犬の椎間板ヘルニアとは?早期発見のために知っておきたいポイント
8.まとめ

症例情報とご来院までの経過

今回ご紹介する症例は以下の通りです。

 

犬種:ミニチュア・ダックスフンド
性別:メス
年齢:5歳4か月
体重:5.2kg

 

ミニチュア・ダックスフンドは椎間板ヘルニアの好発犬種として知られています。また、今回の症例は発症年齢や発症部位も典型的なケースでした。

ご相談内容と来院時の様子

飼い主様のお話では、ご来院の約2週間前からジャンプ力の低下がみられていました

 

以前は問題なく飛び乗れていた場所に上がらなくなったものの、元気や食欲には大きな変化がなく、散歩も普段通りできていたため、初診時には自力で歩行できる状態でした。

 

診察では神経学的な異常が軽度であったことから、治療を行わずに経過をみる選択肢についてもご説明しました。

 

その後、飼い主様は経過観察を希望されましたが、初診から3日後、状況が大きく変化します。

 

留守番中に突然後ろ足が動かなくなり、自力で立ち上がれなくなったため、緊急で再受診されました。

 

椎間板ヘルニアでは、このように短期間で症状が急速に悪化することがあります。そのため、再来院時には直ちに精密検査を行う方針となりました。

検査結果と治療方針

まず神経学的検査を実施しました。

 

その結果、両後肢の浅部痛覚は消失していましたが、深部痛覚は保持されていました。

 

浅部痛覚とは皮膚表面の刺激を感じる能力です。一方、深部痛覚とは強い刺激を脳で認識できるかを評価する重要な神経機能を指します。

 

続いてCT検査とMRI検査を実施しました。

 

CTでは脊椎の構造変化を評価し、MRIでは脊髄への影響を詳しく確認します

 

当院の犬と猫のCT・MRI検査についてより詳しく知りたい方はこちら

 

検査の結果、第12胸椎と第13胸椎の間(T12-T13)に発生した左側椎間板ヘルニアを確認しました。

 

飛び出した椎間板物質が脊柱管内の約70%を占拠し、脊髄を強く圧迫している状態でした。

 

当院では画像診断の精度向上のため、院内評価だけでなく読影医と承認医による二重チェック体制を採用しています

 

神経学的グレードと画像所見を総合的に評価した結果、手術による脊髄の減圧が必要と判断し、同日中に外科治療を行うこととなりました。

 

また、椎間板ヘルニアでは発症後に脊髄軟化症へ進行する可能性もあるため、手術前にはそのリスクについても飼い主様へ十分にご説明しました。

処置の流れ

今回は「片側椎弓切除術」という手術を実施しました。

 

①麻酔・手術準備

まず全身麻酔を実施し、手術部位を慎重に確認しました。

 

神経外科手術では、正確な部位の特定と安全な麻酔管理が重要になります。

 

手術前に知っておきたい麻酔のリスクと対策についてより詳しく知りたい方はこちら

 

②圧迫している椎間板物質の除去

次に片側椎弓切除術を行いました。

 

脊椎の一部を開窓し、脊髄を圧迫している椎間板物質を摘出します。
実際の手術では、脊髄を圧迫していた泥状の椎間板物質が確認されました。

 

これらを慎重に除去しながら、脊髄への圧迫を取り除いていきました。

 

③脊髄の減圧を確認して終了

椎間板物質の除去後、脊髄が十分に減圧されていることを確認して手術を終了しました。

 

手術時間は約40分でした。

術後の入院リハビリと退院までの経過

椎間板ヘルニアでは、手術後のリハビリも重要な治療の一つです。

 

当院では術後の神経機能回復をサポートするため、以下の5本柱でリハビリを行いました。

 

・術部ケア
・徒手療法(補助起立・関節屈伸・反射誘発・尾根部刺激など)
・電気刺激による物理療法
・起立練習・バランス練習
・トレッドミルによる歩行練習

 

これらのリハビリを朝・昼・晩の1日3回実施し、回復状況に合わせて内容を調整しました。

 

また、面会時には飼い主様へ自宅で行うリハビリ方法についても実演を交えながらご説明し、退院後も継続して取り組めるようサポートしました。

術後約2か月で走れるまで回復した経過

術後翌日の時点では、自力で立ち上がることはできませんでした。

 

しかし、リハビリを継続する中で少しずつ神経機能の回復がみられるようになります

 

退院時には約1mほどの歩行が可能となり、自力で前へ進める状態まで改善していました。

 

その後も回復は順調に続き、術後1か月頃には飼い主様から「だいぶ歩けるようになった」というお声をいただいています

 

神経学的検査でも、術前には認められなかった反応が徐々に回復しており、固有受容感覚(プロプリオセプション)にも段階的な改善が確認されました。

 

さらにリハビリを継続した結果、術後約2か月には走れる状態まで回復しています。

 

今回の症例は、早期診断・適切な手術・継続的なリハビリの重要性を改めて示す一例となりました。

犬の椎間板ヘルニアとは?早期発見のために知っておきたいポイント

椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が変性し、脊髄を圧迫する病気です。

 

特にミニチュア・ダックスフンド、フレンチ・ブルドッグ、コーギーなどで多くみられます。

 

また、発症年齢は4〜8歳頃が比較的多いとされています。

 

<見逃したくない初期サイン>

椎間板ヘルニアは突然歩けなくなるイメージを持たれがちですが、実際には軽微なサインから始まる場合もあります。

 

例えば、以下のような変化がみられることがあります。

 

・ジャンプを嫌がる
・抱っこを嫌がる
・背中を触られるのを嫌がる
・歩き方がぎこちない
・足元がふらつく

 

このようなサインに早く気付き、直ちに動物病院を受診することが大切です。

 

<深部痛覚が残っていることの重要性>

椎間板ヘルニアでは、神経学的グレードが治療方針や予後に大きく関わります

 

特に深部痛覚が残っているかどうかは重要な評価項目です。

 

深部痛覚が保持されている段階で適切な治療を行えた場合、良好な回復が期待できるケースも少なくありません。

 

一方で、重症化すると脊髄軟化症へ進行する場合もあり、命に関わる状態となる可能性があります。

 

そのため、「少し様子を見よう」と考えている間に治療のタイミングを逃してしまわないよう注意が必要です。

 

まとめ

犬の椎間板ヘルニアは、「ジャンプしなくなった」「抱っこを嫌がるようになった」「歩き方が少しおかしい」といった小さな変化から始まる場合があります。

 

特にミニチュア・ダックスフンドでは発症リスクが高く、短期間で急激に悪化することも珍しくありません。

 

今回の症例では、CT・MRIによる精密検査で原因を特定し、同日中に片側椎弓切除術を実施しました。その後も継続的なリハビリを行った結果、術後約2か月で再び走れるまで回復することができました。

 

後ろ足のふらつきや立てない症状がみられた場合は、早めの受診が回復の可能性を高める重要なポイントになります。

 

なお、当院ではCT・MRIを用いた精密診断から外科治療、術後リハビリまで一貫したサポートを行っております。愛犬の歩き方や動作に気になる変化がありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

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